入れ歯・義歯

歯を失ったときの治療

歯を失った(もしくは大きく欠けた)まま放置すると大変です。その深刻さについてご説明させて頂きます。患者さんにお話しすると驚かれることの一つに、「歯は勝手に動きます」というのがあります。これはどういうことでしょうか?具体的にお話ししましょう。

上の歯を、なんらかの理由で1本抜いた、あるいは失ってしまったとします。すると、その歯と噛み合っていた下の歯は、上に向かって移動していくのです。また、抜いた歯の隣の歯も、抜いた歯が元々あったところに倒れて傾いてしまいます。歯を抜いた理由がどんなことでも、この現象は同じように起こってきます。

歯は、生えそろって噛み合っている状態であれば、特殊な状況を除いて大きく移動することはありません。ですが、噛み合っていることで力の均衡がとれ、その位置を保っているので、歯が抜けたりして力の均衡が破られると、歯は自然と動いてしまいます。

歯を失うまでいっていなくても、治療途中の歯を長い間(半年以上など)放置していると、やはり歯が動いてしまう場合があります。

歯が動く悪影響とは?

◆虫歯や歯周病のリスクが高まります

隣の歯がなくなり、傾いてしまった(傾斜)歯の周りは、非常にクリーニングがしづらい環境になります。クリーニングが難しいということは、それだけ虫歯や歯周病のリスクが高くなるということです。上下方向に移動してしまった(挺出=ていしゅつ)歯の周りも、同じように食べ物のカスが溜りやすくなり、やはりクリーニングも困難になります。

◆噛み合わせが低くなり、様々なトラブルを引き起こします

歯が傾斜したり挺出したりすると、噛み合わせが「低く」なります。噛み合わせが低くなると、奥歯への負担が増すため、歯が割れやすくなります。奥歯の噛み合わせが低くなると、前歯の負担も増加しますので前歯の様々なトラブルの原因になります。

同じ治療をしても予後は悪くなりやすく、歯周病の進行も早まります。また、歯だけではなく、顎の健康にも影響が出てきます。(顎関節症など)

このように、たとえ1本でも、歯が抜けたまま治療を受けずにいたり、治療途中で放置していたりすると、ドミノ式に歯や顎の様々なトラブルが起こってきてしまうのです。そして、いったん移動してしまった歯や低くなった噛み合わせを元に戻すには、膨大な時間と費用がかかってしまいます。

クレア歯科の豊富な治療方法

◆ブリッジ

失った歯の両隣の歯を削り、その歯を支台として連結した冠をかぶせる方法です。歯がない部分に「橋」をかけるような形になるので「ブリッジ」と呼ばれます。違和感は少なく、咬み心地は悪くありませんが、支台となる健康な歯を削らなくてはならない、支台の歯に過剰な負担がかかり続けてしまうという難点があります。

◆入れ歯

取り外し式の義歯を付ける方法です。失った歯の両隣の歯にバネを引っかけて義歯を維持します。ブリッジよりは隣の歯の負担は軽くなりますが、違和感があり、日々の管理が煩わしいのが難点です。また、歯があったときよりも咬める力は30%位になってしまうという報告もあります。

◆歯の移植

失った歯の代わりに、機能していない他の歯(親知らずなど)を移植する方法です。周りの健康な歯を傷つけることもなく、ご自分の歯を使える理想的な方法です。条件が整っていれば、クレア歯科医院でも一番お勧めしている方法です。ただし、この治療法は「外科手術」が必要、一定期間そこで物を咬めない、成功率が他の治療と比べると低いなどの欠点もあります。

ブリッジ、入れ歯、歯の移植は健康保険が適用できます。(健康保険を適用する場合、使用できる材料に制限があります。)

◆インプラント

失った歯が生えていた骨に人工の歯根を埋入し、その人工歯根(インプラント)に人工歯を接続する方法です。周りの歯を傷つけることなく、違和感も非常に少ないです。利点は移植と似ていますが、物を咬んではいけない期間は短く、成功率も高く、適応できる範囲も非常に広い方法です。ただし、移植と同じく外科手術が必要なこと、費用と治療完了までの期間がかかることなどが欠点としてあげられます。

◆矯正治療

歯を失った部分のスペースに、隣の歯を動かしてくる方法です。ご自分の歯を活かす方法なので、ケースによっては最善の方法となる場合もあります。ただ、歯を失った場合の矯正治療は、それだけで完結しようと思うと可能な条件が整うことが少ないこと。治療期間や費用がかかること。治療期間中は装置が口の中に入っているので慣れるまでは煩わしいという欠点もあります。

歯を残すために

インプラントと矯正治療は、非常に利点の多い治療法ですが、保険適応外治療となります。しかし、複数の方法を組み合わせて治療計画を立案することもできますので、様々なケースに対応可能なのも利点です。

ですが、歯を残せることよりも優れた方法はありません。当院では、まず歯を残すことを第一に考えます。その上で、どうしても歯を失わなければならない場合、悪くなった歯を残すことが後々のことを考えたときにデメリットが多い場合や、すでに歯を失ってしまっている状況では、これまで述べてきたような方法を使い、一人一人の患者さんにベストな治療計画を一緒に考えていきます。

ベストな治療計画を一緒に考えていく上で、間違った知識や先入観は、ベストな選択の妨げになることがあるので、インターネットで調べるよりもきちんと診査を受けていただき、お話を聞いていただきたいと考えています。