インプラント

インプラントは怖くない

「インプラントは恐い」とよく言われます。ご自分で調べたり、歯医者で聞いたことがあったり、友人知人の体験談を聞いたりして、そのように感じられるのだと思います。

インプラントの埋入は、範囲が狭いとはいえ「手術」なので、「恐い」というのは当然の反応だと思いますし、インターネットで検索すると(記事によって真偽は定かではありませんが)恐怖感をあおる内容がいっぱい出てきます。また実際に事故になってしまったケースも報告されています。

我々歯科医師はインプラントを治療に用いることで事故が起きてしまわないように、また患者さんの不利益になるようなことが起こらないように日々診療に取り組んでいます。

安全なインプラント治療とは

CT撮影

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根(インプラント)を埋入することから始まります。

骨の中でインプラントが正しい位置に埋入されることは、安全性ももちろんですが、予後のためにも重要なことです。誤った位置に埋入されてしまったインプラントは、早い段階でトラブルを起こす原因の一つになります。正しい位置に埋入するためには、骨の形態を詳しく把握することが何より重要です。

従来のレントゲン写真だけでは平面的にしか形態を把握することができません。しかし、CTは断層撮影という方法で、骨の形態を立体的に映し出すことができます。
当院ではインプラント治療を行う前に、必ずCT撮影を行い、画像を分析し、安全に治療が行える環境であるかを細かくチェックします。

安全に行うことが難しいと判断した場合、追加で必要な処置をご提案することや、場合によってはインプラント治療を断念していただくこともあります。

サージガイド

CTを細かく分析し、安全面でも機能面でも最適な位置にインプラントを埋入できるように手術を行っていきますが、インプラントは埋入位置が1mmずれるだけで安全な位置を外れてしまうことや治療の予後が大きく変わってしまうことも珍しくありません。

サージガイドという装置は、CT上でインプラントの埋入位置をシミュレーションし、そのデータを使って作ります。ドリルでの作業もインプラントの埋入も1mmのずれもなく行うことが可能となり、安全性や治療の予後にも大きく貢献してくれる装置です。また治療時間の短縮にもつながります。

インプラント治療のメリット

よく咬める

インプラントは「物を咬む」装置として有能なのは、よく知られていると思います。特に入れ歯を使用していた方や、歯が抜けたまま放置されていた方はその効果を強く感じることと思います。インプラントはしっかりと咀嚼することができるので、歯が再生したように感じられることもあると思います。

周囲の歯を守る

個人的な意見ですが、インプラントの機能の中で特に秀でているのが「周囲の歯の負担を軽減できる」という点だと思っています。実際に当院で治療を受けていただいている患者さんには、この点を一番にお話ししています。

ブリッジや入れ歯は、支台となる歯に少なからず負担をかけてしまいます。この点、インプラントは他の歯に負担をかけないのはもちろんですが、周囲の歯にかかる力を負担してくれるため力が分散され、残存歯を守ることができます。

歯を失うと他の残存歯の負担が増え、結果、さらなる崩壊を生んでしまうことがあります。インプラントは崩壊を止めるために非常に有用だと考えられます。

支持する力

支持とは歯の縦方向(長軸方向)にかかる力を受け止めることです。歯を失うと支持力が低下するため、正しい位置よりも咬み込みすぎてしまい、残存歯に負担をかけるばかりでなく、顎の位置が変化してしまう場合もあります。

例えば奥歯でしっかりと支持ができていない場合、下顎が正しい位置で止まらず深く咬み込みます。その結果、上顎の前歯が下顎の前歯に突き上げられてしまい、前方に飛び出してしまいます。

この現象を「フレアーアウト」と呼び、噛み合わせの低くなってしまった入れ歯を長期間使用している方にも見受けられる症状です。このフレアーアウトは、奥歯の支持力を回復させ顎が正しい位置で止まるようになると自然に回復するケースも多くあります。

そういったケースでは、入れ歯よりも強固な支持力を期待できるインプラント治療が第一選択となります。

インプラント治療は痛い?

これまでインプラント治療の利点についてお話してきましたが、当院に通われている患者さんからも多く質問されることが「インプラントって痛いんでしょ?」です。

インプラント治療は歯茎を切って骨に穴を開ける治療ですから、痛いだろうと想像されるのは当然のことだと思います。

実際にインプラント治療を受けていただく患者さんには「痛くなる可能性、腫れる可能性はあります」と説明しています。ただ、治療中は十分に麻酔が効いた状態で行いますし、治療の翌日にお話を伺うと、「思ったより平気だった」「なんで痛くならないの?」と言われることが多いのです。

もちろんインプラントに必要な処置の中で、腫れたり痛んだりする治療もありますが、インプラントを埋入するだけの手術では、術前に想像されているより楽だったという意見がほとんどです。もちろん「インプラントの手術は痛くなりません」とは言えませんが、強い痛みとの長い戦いになる可能性は低いと考えています。

余談ですが、私も右下に一本インプラントが入っており、快適に使えています。