歯周病の治療

歯を失う原因=歯周病

歯医者に行く動機の一位は「虫歯」や「痛み」だと思います。ですが、歯を失う原因の一位は「歯周病」であることは、あまり広く知られていないかもしれません。

歯周病は「歯を支えている骨を溶かす病気」なので、歯そのものがいくら健康でも、歯周病が進行してしまうと歯は抜けてしまいます。歯周病の治療をせずに歯だけを治すことは、ゆるゆるの地盤の上に立派な建物を建てるのと同じようなことです。

世の中に様々なデータが報告されていますが、全体の約42%、50代以降では半数以上が「歯周病」が原因で歯を失っています。「虫歯」が原因で歯を失うのが約25%と言われていますので、「歯周病が原因」は虫歯のほぼ倍の数を占めているということになります。

虫歯であれば学校の歯科健診などで指摘されますが、歯周病はほとんどの場合成人してから進行しますので虫歯ほど認知されていませんが、健康な歯を保つためには歯周病の予防・治療が非常に重要なのです。

歯周病はコッソリと進行

虫歯も初期の段階では自覚症状はほとんどありませんが、歯周病はかなり進行しても痛みなどの症状が出ないケースが多いです。虫歯は歯が溶かされていったり黒く色がついたりするので、患者さんご自身でも気づける場合がありますが、歯周病は変化に気づきづらいのも特徴です。

また虫歯より恐ろしい点は、歯周病の場合、どこか特定の部位だけが悪くなることよりも顎の全体で同時にゆっくりと進行していくことが多いという点です。これも歯周病の進行が気づきづらい原因になっています。

歯周病の原因

歯周病の原因も虫歯と同じく「細菌感染」です。口の中の細菌が食べカスに含まれるものを栄養源としてネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これがプラーク(歯垢)と呼ばれる細菌の塊で、1mg中に10億個の細菌が住んでおり、虫歯や歯周病の原因となります。プラークが歯肉の炎症を起こし、歯肉の中にある骨を溶かしてしまうのです。

このプラークは48時間で石灰化して「歯石」に変化するのですが、歯石の表面にはプラークが非常につきやすくなります。プラークはある程度は歯ブラシで落とせますが、歯石に変化すると歯ブラシでは落とせなくなり、歯科医院で専門的なクリーニングを受ける必要が出てきます。

こうなったら歯周病かも?

◆歯茎から血が出る

歯の表面に細菌が付着し、歯肉が炎症を起こすと、感染を防ぐために血流が増加します。その際に血管の直径は増し血管壁の浸透性が高まるため、わずかな刺激で出血するようになります。

◆歯茎の腫れ

細菌に感染し、炎症を起こしている状態です。(歯周病以外の原因でも起こることはあります)

◆口の中がネバネバする

細菌がネバネバした物質を作り出している状態かもしれません。このネバネバが歯の表面にくっつくとプラーク(歯垢)と呼ばれます。

◆口臭がする

歯周病や虫歯で細菌が多くたまっていると異臭を放ちます。

◆歯がぐらつく

歯周病で歯を支える骨が溶かされている可能性が高いです。もしかしたら歯周病がかなり進行した状態かもしれません。

過信は禁物

歯ブラシは正しく扱えていないと歯磨きを何回していてもプラーク(歯垢)は残ってしまいます。正しい歯磨きの仕方を教わって実践できている方は非常に少ないのが現実だと思います。

当院で歯ブラシ指導を聞いていただくと「そんなこと知らなかった」とおっしゃる方が大勢います。歯周病は進行すると歯を支える骨が溶かされる病気です。この「骨」は歯茎の中にあって、外からは見えません。つまり歯周病の進行は、どんなに注意して見ても正確に見ることは不可能だということです。

当院では歯周病の治療をする場合、必ずレントゲンを撮影して歯茎の中の「骨」の状態を確認します。骨の状態を確認せずに、ただ肉眼で見えるところにある歯石だけ取っても、歯周病の進行を止めることはできないからです。そして治療が終わった後も期間をおいてレントゲンを撮影し、変化を観察します。

これにより「今」だけでなく「将来」どんな治療が必要なのか診断し、お話しします。失ってしまった骨を一部回復させる治療ができる場合もあります。

歯周病は全身疾患に直結

歯周病は口の中に細菌がたまっている状態です。
人間は口から食べ物を摂取し、呼吸も鼻と口から主に行いますので、体の中に入る物は、ほぼ全てが口腔を通ります。
よって、歯周病を持つことは様々な全身疾患につながってしまいます。

  •  ①狭心症、心筋梗塞
  •  ②脳梗塞
  •  ③糖尿病(相互に悪影響)
  •  ④肺炎
  •  ⑤早産
  •  ⑥低体重児出産

上記のような疾患は、歯周病と関連があるとされています。

歯周病は治療/予防可能

当院ではほぼ全ての患者さん(成人の)に対して歯周病の検査を行っています。レントゲン写真やお口の中の写真などを用いて、現状を理解してもらうことや模型やアニメーションなどを用いてブラッシング指導や治療方法の説明など理解し納得して治療を受けていただくために、わかりやすくお話することを心がけています。

診査の結果、歯周病が軽度であった場合でも今後の歯周病予防のためにお話できることが、たくさんあります。歯周病の治療で熱心に通われた患者さんからは「今までの違和感がウソみたいにスッキリしています」という声を多くいただきます。

そう言ってくださる患者さんの口腔内を「かかりつけ医」として、できるだけ長期にわたって「予防」で守っていくお手伝いをさせてもらいたいと当院のスタッフは思っています。